#2 世界の終わりと世界の始まり
真っ白な扉がゆっくりと開いた。
雲のような白い壁にやさしい光が差し込む世界。
真っ白な扉を開けた本人が不思議そうに顔を出していた。
男は扉を開け、目の前にあぐらをかいて座っている白髪の老人に戸惑いながら話かけた。
「・・・・じいさん、ここは?」
男の名前は仙堂 一(せんどう はじめ) 二十五歳
仙堂はこの扉を開ける前の記憶が曖昧だった。気がつくと真っ暗な空間の中に立っていて、目の前にあった真っ白な扉のドアノブを無意識に握り、扉を開けた先に今の真っ白な空間が現れた。
明らかに異世界と思える風景に仙堂は戸惑い、仙堂の目の前にいる老人に問いかけた。
問いかけた結果、老人は当たり前のように仙堂の問いに答えた。
『ここか?』
『ここは生の世界じゃよ』
「生の世界・・・・?」
老人は意味のわからないことを仙堂に告げた。
意味のわからないことを言った老人にふざけている様子もなく、仙堂を歓迎している様子もない。
けれど仙堂は、老人の「生の世界」というキーワードで、ひとつ思い出したことがあった。
ついさっき、自分が死んだという事実を思い出した。
「生の世界って・・・・・」
「だってオレ死んだばっかだぞ!」
『死んだら生まれ変わるんじゃよ。ここは生まれ変わるための待合室のようなものじゃ』
「待合室?」
この世界はやさしい光をさえぎる物は一切なく、真っ白という印象しかない清楚な世界。
そんな清楚な世界にふさわしくない無神経な言葉が老人から発せられた。
『おまえさんは、どうして死んだじゃ?』
「事故死」
仙堂はさらりと自分の死因を発表し、老人は驚くことなく死因を受け入れ、話を進めた。
#3につづく
#1「スタートライン~はじまりはこれから~」
人は死んだらどうなる・・・・・
天国に行くのか? 地獄に行くのか?
はたまた、どちらも存在しないのか。
誰もわからない。
誰もが一度は考えて、結論が出ずに生活し、一生を終える。
一生を終えたのなら、人は死んだらどうなるかの結論を体験できるだろう。
しかし、体験しても誰にも伝えることができない謎の空間
謎・謎・謎 謎とは、この世に数えきれないほどあり、死の世界にも謎がある。
では、生の世界にも謎はないだろうか。
どうして私は生まれてきたのだろう。
私なんか生まれてこなければよかったのに。
そう思ったことはないだろうか。
「死人に口なし」
死の世界はわからない謎だが、その先にある生の世界がわかるとしたら。
「輪廻転生」
「輪廻」とは車輪が回転し続けるように、人が何度も生死を繰り返すこと。
「転生」とは生まれ変わること言う。
人は余程の悪事をしなければ、人にまた生まれ変わることができる。
そしてどんな人間に生まれ変わるかを自分自身で選択することができるが、誰もが生まれ変わるなら、よりよい人生を送れるように金持ちの子供や芸能人の子供になりたがる。
しかし、選択ができるからといってすぐに決まることではない。
そんな話をしていたらまた、死の世界から生の世界へと続く扉が開いたようだ。
#2につづく
syosekikasuruniha.hatenadiary.com
あらすじ
人は亡くなったのなら、天国に行けるのか?
地獄に行ってしまうのか?
自分が亡くなったら、亡くなった会いたい人に会えるのだろうか?
もしかすると男女別々の天国なのかもしれない。
そもそも天国は存在しないかもしれない。
これは天国の物語。
いや、天国の先のお話。誰もが自分が自分として生まれてきた理由を実は知っている。
知っていても思い出せないだけだとしたら・・・・・・?
そんなことを言っているとまた、「生の世界」に仙堂 一(せんどう はじめ)という男がやってきた。
仙堂はある男の子を助けて亡くなった。
ある出来事がおきて、ふいに亡くなってしまった自分に仙堂は戸惑いを隠せなかった。
生まれるというスタートしてから苦悩を経て、死というゴールを迎えた仙堂。
生まれて亡くなる・・・・
一度だけスタートして、一度だけゴールを迎えると思っていた。
そんな仙堂が今、生の世界という世界に足を踏み入れた。
亡くなってからの世界に今、仙堂一はいる。